年々体力の衰えを感じる今日この頃。いやこれ体力なんですかね、夏バテとは違うと思うんですけど、冬の寒さには耐えられるのですが夏の展示会廻り、歩く事自体に問題はないのですが例えば電車の時間がギリギリで暑い中歩いた後にダッシュとかするとマスクが邪魔で仕方がありません。まぁ今日は原宿スタートで青山通り沿いの青山から六本木通り沿いの渋谷まで歩いて終わりだったので、気温も含めてその間は問題なかったんですけど、問題はそこじゃなくて朝の橋本の京王線の時刻に遅れそうでダッシュしたらまぁそれが辛いのなんの。取り敢えず間に合ったのですがこんな程度のダッシュで息も絶え絶えになるとは歳だわぁ、と思わずには要られませんでした。
とはいえ、朝からしっかり展示会でして、まずはラパズを見つつそれ以外に新たに提案されていたブランドをどうするか、といったところだったのですが、これがですね、ラパズ、いよいよやばい事になってしまった様です。オーガニック系の価格高騰問題については秋冬にも指摘しましたが、この春夏は更に問題が拡大してしまった様で、特に麻素材が如何にもこうにも高くなっていて、7,900円で今シーズン出していたTシャツが14,000円に。11,000円だったポロシャツが18,000円に。シャツも麻素材の物は23,000円→34,000円に。綿の生地の物はカットソーも布帛のシャツも2割弱のアップだったのですが、麻はもう諦めるしかありませんね。幸い来シーズン提案されている麻の生地、全て昨年今年で取った物ばかりでして、だったら在庫だけで提案すれば他所様が税込で3万半ばなのに対し、2万円台前半で提案出来るじゃないですか。ならまぁそれで良いか、という事で結論として現在の価格帯での販売を継続する事を優先して、ラパズは来春夏、発注を1シーズン休止する事にしました。日本上陸以来継続展開してきた身としては忸怩たる思いはあるのですが、無理をしても始まりませんので。
このぐらいアップしてもいける、という判断て人それぞれというか立場によって違うものですが、これ決して私が最も確かな判断が出来るとか自惚れる気は毛頭ないんですけど、人は自分にとって都合の良い様に考えたい、所謂正常バイアスが働いてしまうのは否めない事実です。この場合、駄目だと思うよりこれでも大丈夫、と思いたいのが販売する側の心理です。それが対消費者、BtoCであっても対卸、BtoBであっても同じ様に働くのですが、我々はまず消費者、特に私にしたらB.A.Tのお客様がどう思うか、というところをスタート段階の基準にします。それに対して例えばインポートブランドの代理店商社の立場だと、ブランドイメージとして競合しているというか仮想敵というかそういったところがどの様な状況にあるか、とか行く行くはもう1ランク上のポジションに行きたいとブランド側も希望しているからそれならこのぐらいの値上げはいけるんじゃないか、とか漠然としたイメージで判断すると思うのです。勿論大前提として円安や資材や流通コストの高騰により価格を上げざるを得ない状況にある、というのがあるのですが、ここでやるやらないの話になると、まず絶対に売れないと思える程、どうにも売れるイメージが湧かないレベルの値上げだと早々に取り扱いを諦めると思います。なのでそれは論外として、どの程度だったらなんとか市場に受け入れられるか(ここが私の場合は顧客様中心であり商社やメーカーは数字的根拠のないブランドイメージになるのですが)を考える事になります。
勿論ハイブランド志向というか高級料亭の様に金に糸目をつけない素材の追求をして妥協のない縫製仕様とデザインの追求をした上で大衆居酒屋の10倍の価格を設定してもそりゃ通りますが、ここで問題になるのはそういうブランドポジションでそもそも展開してこなかったでしょ!というブランドでして、今までユーロ圏の生産拠点となっている国での本国企画の本国生産だから同じ生産国のブランドよりもリーズナブルでハイクオリティでコスパが良くて余計なブランドイメージ代とかが乗っていない、デイリーに使える本物志向のユーロカジュアルとしてのポジションを構築してきたところが、はいシャツ3万ね、というのはそこそこなハイブランド志向なところならこのクオリティでその価格するよね、という根拠で商社がその価格でいってしまえ!とGOしてしまったらどうなるのか。消費者としての私ならこう考えます、イヤだったら後五千円足して名の知れたハイブランド志向のところのを買うわ、と。
これが不思議なもので人は否定されると不愉快に思えて反論したくなるもので、元々そのブランドは新たに日本上陸して実績はないけれど同クオリティのところよりもコスパが良いし良いバランスですよ!とセールストークをしていたにも関わらず、それを失ったら意味ないじゃん、と言われたらいや他の同レベルのところはこのぐらいかもっと高いから!と主張するんですよねぇ。でもじゃぁそれぐらいの知名度やポジション取りが現状出来てますか?という事に。そうすると値上げせざるを得ない状況を理解してくれているのならその辺をセールストークで上手い事お客様を説得して売り捌くのがあなた方のやる事じゃないか、みたいな話になるんです。
いやいやいやいや、事情は事情としてそのままそれを給料が2割増えた訳でもない顧客様にぶつけ、しかも何かセールストークというのを無理矢理お客様を丸め込む為のテクニックだというのは如何なものか、いやもっと言えばそんなセールストークは一切しておりません、マルチの勧誘とかと一緒にされるのは不愉快です、と言いたいぐらいです。
ただ実際市場にぶつけてみないとわからないじゃないか!と思いたい気持ちも解ります。でもじゃあ今回は発注しますね、で実際にぶつけてみたけどほら売れなかったでしょ?となった時にその発注分引き取ってくれる訳でもなし、値下げしてくれる訳でもないので私がその価格が魅力的であると思えない、となった時点でそれはもう取れないな、という判断をするしかないのです。いけると思えば高くなっても発注するんですから。実際トリッカーズだって6万前後からスタートして8万台までは続けて別注組んできましたし。でも税込10万台となると狐狩りで履くカントリーシューズが10万じゃ猟師もやってらんないよね、となりますよね。ベルナール・ザンスのパンツに4万とかも2万円台で取り扱っていたB.A.T的にはなしという判断になるのです。
私はありもしない何かその物を持つ事自体のステイタスとかを売る気もなければ売っているなんてこれっぽっちも思っておらず、もっと地に足着いた楽しさであり文化的側面でありそのものを身につけて過ごすライフスタイルを売っていると思っているので、その線引きはなるべく明確にしておきたいのです。
とまぁ色々書いてきましたが、これが悪い話だけで終わるのにこんなに引っ張った訳ではありません。そんな訳で物の良さ自体は全く疑う余地もなく良いですけど、現在店頭にあるラインナップとお客さまの志向とを鑑みてラパズは来春夏はお休みして現在の在庫を推していこうと思います。
で、問題なのはそれ以外に持ち込まれていた新鋭ブランド2つです。これが良かったんですよ、色々と。まずオランダのBRAM'S FRUITというブランド。オランダ企画のポルトガル生産ですが、古き良きガーデニングスタイルや人の手により管理されて作り出された自然(庭や公園がまさにそれです)の中にマッチする服であり、当然公園は街に隣接しているのでそれを街着として持ち込んでしっくりくる、というのをブラムさんの青果店というブランドとしてオランダのマルシェの小粋な雰囲気に合うというコンセプトにしたブランドです。
これが生地もかなりこだわって雰囲気に合わせつつ価格的にもこれならいける!というレンジで、カットソーもシャツもパンツも、一部アウターもいけるな、という感じでした。高騰しているリネンのシャツで2万円程度という感じですし、野菜を入れるざっくりとした麻生地で作られたバケットハットやショルダーバッグも良い感じでしたね。なのでこれは一通り発注する予定なのでお楽しみに。
そしてもう1つが英国のアパレルそのものではなく、アーチスト集団によるアート表現としての服であり物を提案する、こちらもポルトガル製がメインの英国ブランド(レーベル)です。ブランドといってもこちらはシーズナルに春夏展とか秋冬展といったペースでコレクション提案をするのではなく、彼らが作りたい物を企画し、それが彼らアーチスト集団の中でこれはいける!となった物だけをその都度生産して提案するというスタンスなので、ブランドというよりもレーベルという表現になるのですが、コストを考えてポルトガルでボディ制作や縫製は行いますが、生地はSDGsを意識して全てオーガニック、それらに英国のアトリエで捺染を中心としたプリントを施し、製品としての完成を見る、という感じです。中にはニットの様に編みそのものをポルトガルで行うのでネタ出しのみ英国、というものもありますが、最終加工地が生産国表示になるので、カットソーは英国製になるかもしれません。
そしてそんな生産ペースでのラインナップをアトリエ兼ショップで販売しているので、春夏ならこの辺のアイテムがいけるな、というのをピックアップして持ってきていたので1ラック程度のアイテム数でして、シャツとTシャツぐらいしか来春夏分としては発注しませんが、それでも久しぶりに尖ったアートネタを新たに見つけたのは収穫でした。このコレクションのタイミングで発表する為に作品を作るのではない、というスタンスも良いですね。
とまぁラパズは生産体制が落ち着く事を願うとして他に収穫があったのでまぁよしとして、お昼を食べて合同展に行ったのですが、まぁ合同展、最近はもうこんな感じですかね、いや悪いんじゃなくてメンツがほとんど変わらないという。もちろん新しいところが出てはいましたが、これは他を差し替えてでも取ろう!と思えるところはなく。とはいえ廻らないと出会いの可能性は0になってしまうので私は足を運ぶのですが、インポートに関してはコロナ禍でネットで直接探すのがかなり板に付きつつあり、その場合リスクも含めてなので日本で商社を通して取るのとどちらが良いのかはなんとも言えませんが、どちらにもメリットとデメリットがあるのでバランス良く織り交ぜていこうと思っております。で、結局というかここ数年毎度の事というか、合同展では得るものがなく戻ってきた次第です。
今日はなかなか長々と報告を書いているので、この辺で切り上げたいのですが、本日もう一つ残念な事に見舞われまして、ロイヤルネイビーで別注しようと思っていた生地がボツってしまいまして。今回オーバートラウザースをモディファイしてぶった斬ってハーフパンツにした物を綿麻のレトロな織りのCAMBRIC(キャンブリック)で別注しようとしていたんですけど、春夏としては2年連続の生地ボツを食らってしまいました。まぁ仕方がないので提案通りの綿のヘリンボーンで普通にリリースしますが、それにより色々と全体の構想の変更を余儀なくされてしまいまして、ここはもう仕方がないから久しぶりにコンチネンタルサーカスでの企画をぶつけて補完し、更にドメブラの別注で補強しようと考えております。その辺についても進捗があればご報告いたしますのでお楽しみに。
明日は昨日のパンツにも、先に晩夏初秋の新作紹介 vol.1で紹介したnarifuri×ワイルドシングスのパンツにも合う、イタリアメーカーの非常に完成度の高いトレランスニーカーを紹介します、こちらも乞うご期待です。
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