2024年09月30日

秋の新作紹介 vol.2 NORDISKのLED LANTERN




いやぁ、寄る年並みには勝てないとはよく言ったもので、久々に店で夜を徹しての作業をしたのですが、仕上げた書類を持って隣駅から徒歩で30分ぐらいかかるので基本バスになる税務署迄行ったですけど、結局全て仕上げるのに10時過ぎ迄かかって、税務署着いたら11時半頃だったので普段行かない市役所周辺のグルメスポットで昼食を、と思いましたが、行きにバスで通ったら相模原駅近くの町中華といえばの自由軒の表には7月24日から当面休業しますの張り紙が。となると自由軒が候補から消えましたが、残りのこれはと思えるところがどちらもやっていれば並んでいるレベルの所なんでどうしてくれようか、と悩みながら税務署に向かい、サクッと提出は済ませていざ、となったのですが。候補2つの内まぼろしカレーは調べたら月火曜は定休日。だったら気になっていたので行くしかない!という事で中村麺三郎商店へ。基本メニューで1000円越えのラーメン屋、最近都内でも支那そばや出身者を中心に高い上に予約試合と食べれないラーメン屋とかありますが、その価格になったら不味かったら内心沸々と怒りが込み上げると思うよなぁ、なんて思いながら税務署から徒歩5分で到着。





本当は澄んだ塩ラーメンを食べる気満々というか、ちょっと動いても嫌な汗をかくぐらいに疲労が溜まっていたので、本気で作った身体に沁みる塩、と思って行ったのに、限定メニューの白湯ラーメンちゅうのがあるやないですか。どうもこれは元々の希望からはかけ離れたドロドロの白濁したスープで天一とか京都系っぽいのに、そんな澄んだスープを作るところがそんなラーメン限定で出しているなんてなったら滅多に来ないところにあるから気になってしまい、結局白湯ラーメンを注文。いや美味かった、まぁ書いた通りで1,500円取られて不味かったら怒っちゃうけど、スープも麺も具材も全てに隙がない、吟味を重ねて完成したラーメンでした。恐らく鶏ガラとモミジを煮立たせずに煮込んで煮詰めたゼラチンと基本のスープを組み合わせたであろう粘度の高い白濁スープ、豚骨のコッテリと違いあのアンモニア臭もせず、低温調理と炭火焼きと煮豚の3種類のチャーシューも楽しめました。





で、そこからですよ。昼飯食って一息吐いたし、と歩いて駅に向かったのですが。遅ぇんだ、この足の運びが。ちょっと1日徹夜した程度でカロリー補給してもこんなに疲れが抜けないんだぁ、とかなり歳を感じつつ、歩いて駅迄向かい、一旦自宅に戻って暑くもないのにじっとり書いた脂汗を落とすべくシャワーだけ浴びて着替えて店に向かいました。と言っても店は開けてあってちょっとあがいお昼に出てきた程度の時間でしたが、今日はこりゃよく眠れるでしょう。





9月最終日、そんな感じで開店時間に店を出て13時過ぎからの営業となってしまいましたが、25℃ある夏日だったにも関わらず、ビジカジで使えるテーラードジャケットや流石に夜は20℃以下になる日が多くなってきたのでジーンズと未紹介おカバーオールをチェックしにいらした方がいて、月曜日にしてはそれなりでした。





ただ流石に今日は疲れたので早めに上がろうと早い時間からブログ書き始めております。


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ノルディスクから取るのがアパレルばかりだと思ったらそこは折角ノルディスクと取引しているんで、今季から1点ずつでもテントを含めたほぼ全てのアイテムが取り扱える様になりました。とはいえ、テントは店の中で張れないし、ガチにフィールドでしか使えないであろうアイテムはパスして、日常的に使えるアイテムを紹介してライフスタイル提案が出来たら良いな、と思って選んだのがこれ。一応NORDISK JAPAN社的には限定アイテムに指定しているみたいなんですが、ガソリンやガスのランタンに比べ、部屋で普通に使えて安全性も高く、光度の調整もリモコンでOK。充電も最大光量では8時間という設定ですが、半分ですと15時間、最も暗い状態ですと48時間保つみたいです。そしてUSBケーブルで充電可能ですから非常に取り回しがよろしいかと。





しかも土台の木の部分とリモコンにノルディスクの熊が描かれており、これまた小洒落感を演出しております。そして何より魅力的なのがテントに比べて非常にリーズアブルな事。これで6,490円(税込)ってあまりに価格差がないか!?と思ってしまいます。光量は3段階調整、4時間でフル充電で充電はUSBというとても便利な高機能アイテムです。結構な数を取ったのですが、残り4つになっておりますので、気になった方はお早めに。





早めに上がろうと思っていたのですが、何気にお客様がいらして下さりまぁまぁな時間になってしまいました。10月1日目の明日は秋らしいけど色的には爽やかな長袖Tシャツの紹介を予定しております。お楽しみに。


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2024年09月29日

秋の新作紹介 vol.1 Le minorのHeavy Weight Black Border L/S Tee (Limited)




なんという事か・・・ついうっかりブログを書き終えてアップするボタンを押したんですが、今一つ反応がない。くるくるマークが回っているだけで進まない。嫌な予感しかしないが仕方がないので更新したら案の定アップされていない。当然データは消えてまして、かなり萎えながら再度書き直しておりますが、取り敢えず画像だけアップしておいて残りは晩飯食って心機一転してから完成させようと思います。





明日の朝迄に確定申告書類を揃えて税務署に行かねばならんので、土曜に比べて翌日から仕事なせいでお客様がどうしても少ないのを気にしつつ、集計作業を続けてました。その甲斐あって集計そのものは終わったので、あとはそれを


所定の書類に書き込んでプリントアウトしておしまいですが、今日はまた店に戻って徹夜で作業ですかね。





さて、飯も食ったし戻って作業するならブログだけでも仕上げて風呂くらい入ってから戻りますか。


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前回紹介したトリコロールもフランスのセレクトショップチェーン(複数店舗あるところ)の別注で作られた生地だそうですが、こちらもまたフランスの別のセレクトショップチェーンが別注した生地だそうで。トリコロールの方は定番色の組み合わせでありながら今迄にないバランスで作られたなかなかなインパクトでしたが、こちらはもしヘヴィウェイト天竺が廃番になっていなかったらきっとこの組み合わせでは作らないだろうな、というぶっちゃけ面白味のないボーダーの色を黒、組み合わせる色もこの上なくオーセンティックなネイビーとチャコールの2色です。


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そもそもオーセンティックなトラッドアイテムを好む方は基本ベーシックな鉄板な組み合わせを好む傾向にあります。そしてド真ん中のトラッドとなると例えば紺ブレにベージュのチノパン、エクリュ(生成り)×ネイビーのヘヴィウェイト天竺の長袖Tシャツで足元はライトブラウンのフレンチローファーとかになりますが、あまりにテンプレートに過ぎるのは否めず。





あくまで私の勝手な想像ですが、フランスだとネイビーやブラックを基調としたミリタリーやワークテイストなアイテム構成のセレクトショップ、ありそうじゃないですか。そういったところでベーシックだけどもう通常展開がないルミノアのヘヴィウェイト天竺の長袖Tシャツを別注したらこんな感じではないでしょうか。


事実日本で代理店が頑張って展開しているヘヴィウェイトのボーダーはブラン(白)×ネイビーのみですから、多少ハードなイメージにしたいからといってもネイビー×ブラックはないのです。更にモノトーンコーデを想定しても無地の黒はありますがボーダーは存在せず。なのでチャコール×ブラックも一番(間違いなく白×黒より合わせ易いです)使い易いモノトーンボーダーなのに存在しておりません。





そうなるとこの2配色を並べるのが美味しいという判断をして別注したのではなかろうかと。面白さやオリジナリティよりも使い易さと合わせ易さを優先した、それでいて今では希少な美味しい配色でしょう。サイズは3と4の2サイズ展開、価格は16,500円(税込)です。





さて明日は9月最終日。ここは目先を変えて、今シーズンのノルディスクの目玉的アイテム、インテリアとして楽しめるアイテムを紹介します、お楽しみに。


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2024年09月28日

晩夏初秋の新作紹介 vol.23 SCRT(Screen Test)の“Bunny” S/S Tee




今日は流石にお客様がいらして下さいましたが、これがねぇ、今日想定外の入荷があってそれが即動いていくという。流石に実物を見た方のお買い上げでNANAG×Flower MOUNTAINのスニーカーも動いてましたし、昨日紹介した天使の涙の長袖Tシャツ版の方はサクサク動いてラス1に。SCRTの瞬発力のあるアイテムの瞬発力、流石です。映画的にカルトムービーという点においては今日紹介するドニー・ダーコの方が評価が高いですが、映像の美しさや音楽とのマッチングにおいては天使の涙だな、と思います。とはいえ、ストーリー的に刺さるのかどっちよ、と問われたらそれはそう、ドニー・ダーコなんですよねぇ。





因みに今日入荷したのってMOUT RECON TAILORのパンツとCPOだったんですが、パンツの方は価格が4万円台にも関わらずこの価格でも取らねばと思わされる、この上なく良く出来たパンツでして、今日の段階でこれまたラス1になっております。現在B.A.Tで取り扱っているパンツの中で最も高額なパンツであるにも関わらずです。加えて逆にこれでこの価格はおかしいだろ!というツッコミを何度も頂いているロイヤルネイビーの別注コーデュロイフィールドカーゴトラウザース、今日も動いておりました。随分と数を減らしておりまして、B.A.Tにおけるロイヤルネイビー史上最も売れたパンツになるのは間違いなさそうです。





とまぁ色々と動いております、明日の日曜日、是非色々とチェックしにお越し頂きたいところです。





さて、そろそろ本日のTシャツの紹介に映らせて頂きます。


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2001年公開の映画ですが、これは賞を取れる映画ではありません。ですが現代のサブカルチャー史においては重要な位置にあります。何しろ俗に言うセカイ系、それはエヴァでありブギーポップであり、涼宮ハルヒであり、そういった我が国の得意とするアニメにおいてそのアニメーションという架空現実を設定して表現し易い表現方法において、主流とも言える設定で描かれる厨二病的な少年を主人公とした映画だから。





ぶっちゃけその様々な伏線的なキーアイテムや空想科学的な展開はそれはそれとして、世界的な重大な問題が極めて個人的な自分と彼女、もしくは自分にしか判らない事象によって左右されるという設定。昨日丁度書きましたよね、うだつの上がらない平凡なやつを描いたところでヒットはしないだろう、と。でも最近は作者や監督の妄想的な、平凡な自分が突如主人公として苦悩する事になる、もしくは引き篭もっていたのに異世界転生したら無双する、とか現実の自分と同じ様なキャラクターが劇中で絶対にあり得ない主役として舞台に立つ、あるいは望む全てが叶う、みたいな設定、多いですよね。





ただ一つ違うとしたら、この映画の主人公であるドニーは一般的なハッピーエンドは迎えないという事。そういう意味では描かれ方は“僕らの”で選ばれてしまった人々に近いかもしれません。世界を救う為に戦うみたいな発想にはならないけれど、日々生きていく中で腹立たしく思う事やぶっ飛ばしてスッキリしたい事は沢山あり、そして自分が想う誰かの為に、その人が幸せに生きる未来の為であれば命を賭けて世界の終焉を回避する為に足掻く事は出来る、という点において現代的な人生観としてのリアリティはあるのではないでしょうか。





これ、かつて小松左京原作の日本沈没の映画化作品で、最初の作品で主人公は日本という国を守る為に命を投げ出して日本が消滅するのを阻止して終わります。しかしリブート版では草?剛演じる主人公は自分が愛する人々の為に彼等がいるから命を賭けて日本の沈没を防ぎますが、その対比として今更戦前の自分は絶対安全な高みから国の為に命を投げ出せと命令しておいて愛国を説く為政者が提唱する様な恥知らずな全体主義ではなく、それでも誰に命じられるでもなく本当に能力があって何かを成しうる立場の人が極めてパーソナルな理由で結果世界そのものを救う行動を取る、というのが描かれているのだと理解したら刺さると思うのです。





でもまぁ、印象的なのは銀色のうさぎの着ぐるみのヤツがその世界の終わりの期限を告げにくるところでして、これ明らかに不思議の国のアリスのウサギのオマージュだよな、と思えるのです。で、こんなTシャツをSCRTは作ってきたんですな。色も微妙なベージュで、シュールなウサギの着ぐるみ男ではなく、つぶらな瞳のリアルなうさぎが描かれている辺り、良い感じです。サイズはこちらもS・M・Lの3サイズ展開、価格は9,900円(税込)です。





という事で。無理矢理引っ張っていた晩夏初秋の新作紹介も今日でおしまい。同じ内容の長袖Tシャツは秋の新作紹介に廻します。という事で明日からは秋の新作紹介になりますが、明日の紹介はルミノアのヘヴィウェイト、トリコロールとは別でフランスのセレクトショップチェーンが残した生地を使って作った鉄板色なのに限定アイテムとなってしまっている2色を紹介します、お楽しみに。





では明日も皆様のお越しをお待ちしております。


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2024年09月27日

晩夏初秋の新作紹介 vol.22 SCRT(STAY CREATIVE Co.)の“Such Warmth” S/S Tee




何だかなぁ、降る降る詐欺だよ、こりゃ。そう思ってしまうぐらい今日は台風から変わった熱帯低気圧の影響でかなりな大雨の危険性を予報されておりましたので、こりゃもう仕方がない、と思っていたんですが別に待っていた訳じゃないのですが雨降らない。いや降るんですけどパラっときては止むの繰り返し。まぁその分昨日に引き続き確定申告書類の作成の為の決算項目の集計等が進みはしましたが、元々季節の狭間で秋の立ち上がりのアイテムが投入されてきても実際には動きが鈍いのが9月とはいえ、こりゃどうにも来月以降の身動きにもつながってくるぐらいにしんどい9月だったので、この降る降る詐欺には心をおられそうになりました。





とはいえ、本日は待っていた納品があり、昨日の前振りの銘作紹介に続いて、このタイミングで投入となりましたが、良い感じな半袖&長袖Tシャツの投入でしたので個人的には満足しつつ、いろいろ作業しながらそちらの紹介に向けての写真の処理もしておりました。で、今シーズンは中国返還前の香港を描いた王家衛の堕落天使(英題:Fallen Angels・邦題:天使の涙)と厨二病的伏線や設定で一度観ただけでは理解しきれないと言われる美少女転校生としてドリュー・バリモアが出演している事でも知られるドニー・ダーコの2作品にフィーチャーしたコレクションを取っております。それぞれ半袖と長袖1型ずつ取ったのですが、今日はまず天使の涙から。


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個人的に格好良い映画とかドラマとか漫画とか小説ってあまり得意じゃなく。特に単なる青春群像劇を格好良い男女で描かれてしまうと何とも感情移入出来ないからで、どうしても尺があるから映画というのは発生するイベントが象徴的に描かれてしまいますし、長期的に連載されてエピソードに溢れているハイスクール漫画とかなら自然に描く事も可能っちゃ可能何ですが、シチュエーションに萌えるというのではなくあれはそのシチュエーションに自分があると想定して萌えるのであって、それが自分には起こり得ない極めて特殊な日常である、という事を逆に意識してしまうのです。もちろんそれは娯楽作品であるからして、つまんねぇうだつの上がらない人物の単なる日常を描いても面白くも何ともないとも思うのですが、そういうのを抜きにしてああ、この格好良さは良いかも、と思わせられる作品て本当に良い作品なんでしょう。





何故ドニー・ダーコよりもこちらを先にしたのか、というと単に昨日の夜というか日付変わった今日の1時半頃に、BSNHKでMUST BE UK TVをやってまして、70年代80年代の英国の音楽番組を編集して流すこの番組で、アリソン・モイェットが出ていたのが決め手でした。





何をまた全く関係のない方向に話が飛んでんだ??と思われるかもしれませんが、個人的に王家衛という監督に対する評価の高さの一つに彼が選ぶ挿入歌のセンスが非常に良いというのが挙げられます。やはり中国返還前の香港というのは英国でもあってですね、英国のロックを含むヒット曲はそのまま香港でも受けている、という事なんでしょう、このシーンにはこれ、というのがぴたりとハマるのです。特にこの天使の涙を名作たらしめているのはThe Flying PicketsのOnly youをメインテーマに使っているからだと私は思っております。





香港という島、特に九龍地区周辺はかつての魔窟的なイメージは薄れたとはいえ、退廃的で下層民が多くそれでいて香港は開発が進んでいるのでサイバーパンク的とまではいきませんがスチームパンクとの間ぐらいの雰囲気が非常に良く出ております。それが彼の描く香港の魅力であり、本来この作品のエピソードが含まれるはずだった前作“恋する惑星”もそうなんですけど、最近の日本だと日常の切り取り方が叙景的な新海誠監督に通じるところがあります。言の葉の庭で描かれた代々木から新宿御苑や原宿や明治神宮周辺の風景は非常に馴染みのある景色なだけに、その見慣れた日常の中にある風景を心象風景として切り取られるとグッと惹きつけられてしまいますが、観光で訪れた程度の香港ですら王家衛にとっての日常の中にそれを際立たせる為のキャラクター設定をしてその中での人の営みというのを判り易く何も考えずに生きている様で、それでも無慈悲な現実の中上手くいかない日々をもがいて暮らし、刹那の生を実感する瞬間を積み重ねて生きている、というのを描きだしております。


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このTシャツはラストに近いシーンで金城武が演じる喋れないマンションオーナーの息子モウが、ミシェル・リー演じる元殺し屋のエージェントを家までバイクで送るシーンを切り抜いております。胸にはそのタンデムで久しぶりに人の温もりを感じたエージェントが微笑むシーンを、背中には登場人物の悲喜交々を連想させるシーンをプリントしており、なかなかい作りこまれた1着になっております。両面共にしっかりとプリントが入っているので、肉厚なオリジナルボディのTシャツと相まって秋に着ていて良い感じでしょう。サイズはS・M・Lの3サイズ展開、価格は9,900円(税込)です。





で、何故アリソン・モイェットをマストビーUKTVで見たらこっちから紹介しよう、という事になったのかというお話が途中でしたので。





その風景や拠り所を求める人の性というのとフライングピケッツのアカペラがとてもハマっているのですが、このオンリーユーはそもそもが彼等の楽曲ではなくYazooという80年代のテクノポップを牽引したデュオの物で、そのヴォーカルがAlison Moyetでした。2年程度の活動だったヤズー解散後のソロで活動しているアリソンのパフォーマンスを昨日見たのですが、何度聞き比べてみてもフライングピケッツの方が沁みるんですよねぇ。シンセサイザー奏者であるヴィンス・クラークがデペッシュモード脱退後に結成したデュオであるヤズーですが、シンセサイザーよりも肉声だけで構成されたバージョンの方がよく聞こえてしまうというのは不思議なものです。このPV、フライングピケッツ版そのものも80年代英国を彷彿とさせるもので良いのですが、後に映画のシーンと重ねて作られたPVバージョンも良いんです。でもまずは今日は彼等に敬意を表してオリジナルを。








名曲ですので聞いた事の買い方は是非。長袖紹介時に映画PVバージョンを貼ろうと思います。





という事でこの週末は雨は降らないみたいですので、是非秋物を見にお越し頂ければと思います。





そして明日のアイテム紹介はモウ1つの作品、ドニー・ダーコの物を紹介しますのでお楽しみに。


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2024年09月26日

晩夏初秋の銘作紹介 vol.16 SCRT(STAY CREATIVE Co.)の“Like a Tree” L/S Tee




さて今日は何をしている定休日かと言いますと。毎年この話は必ず出す事になってしまう=ギリギリまで手をつけずにいる確定申告の為の決算書の作成を朝からやっている1日になっております。完全なオフを過ごしたいとは思いませんが、これなら展示会廻りに出ている方が随分と楽しめる、という楽しさは欠片も無い作業です。ひたすら入力をし続ける作業なのですが、毎年の事ながらこれ毎月きちんとある程度の作業をやっていればここまでしんどくなる事はないはずなのに溜めてしまう、という。ただ来年3月の一般の確定申告から税務署の収受印が廃止されるので、もう紙で出す必要性がなくなります。それだけの為にe-taxにしていなかったので、e-taxにすると紙での出力が必要なくなりますから今後全て電子帳簿化される事を考えたら随分作業が軽減されると思われるので、来年以降はそうしようと思っております。とはいえ、今年は昨年と同じ様にせざるを得ないので、今日は1日かけてかなりの部分を終わらせて、今年は30日が月曜日なので月曜日の朝に提出しにいけば良いか、といった感じです。予定では今日中に7割方終わる予定ですので。





そんな休日にもならない定休日を過ごしておりますが、昨日に比べたら真夏日にギリギリ届かない気温なので未だ夏の気温ですけど、そうは言ってもここ数日で日中は半袖Tシャツでも長袖の羽織が必要だよね、という気温になっており。でなければ長袖Tシャツ1枚で過ごすのが羽織を持ち歩かなくて良いから楽、という気候になりつつあります。とりあえず長期予報を見ると10月は秋の気温としては例年よりも高い予報になっていて、でも12月になると昨年よりはしっかりとした冬になる、という予報になっております。なので10月いっぱいぐらいは長袖Tシャツもしくは半袖Tシャツ+シャツジャケ程度で過ごせるみたいですね。そして昨日は確定ではなく情報のみでしたが、本日SCRTの秋冬コレクションの半袖&長袖Tシャツが出荷になったという連絡がありましたので、間違いなく明日は半袖Tシャツの紹介になります。その上ちょいと何故このタイミングで!?というお話もありましたので、今日の紹介はそのSCRTの長袖Tシャツの銘作紹介とさせて頂きます。


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何故ステイクリエイティブと書かずにSCRTと書いているのか。本日出荷しました、というメールと共になんと今シーズンからブランド名が変わるというインフォメーションがありまして。これが非常にデリケートなブランド名変更でして、ブランドの略称はSCRTで変わらず、STAY CREATIVEからSCREEN TESTに今シーズンから変更したんだそうで。カルトムービーを主とした映画への愛情を反映し、映画業界でアイデアの可能性を評価するクリエイティブなプロセスであるスクリーンテストというステップをブランド名に変更したとの事。無理矢理同じ略になる言葉を選んだんじゃないかと思わなくもないんですが、ブランドコンセプトにより合うのはこれだ、という事で略称は変わらずに名称が変わるみたいです。





という事で明日入荷する分から表記がSCRT(SCREEN TEST)に変わります。





ですがこのブランド、結構映画以外の英国の社会問題にフォーカスしたネタの物が多く、この長袖Tシャツも英国であってもロンドン周辺では自然のままの木が激減しているという事を問題にしており、半袖Tシャツでもロンドン近郊にあった池や湿地が埋め立てられたり環境が変わったりで近郊に多く棲息していた品種の蛙が消滅しかかっているという問題を取り上げたりしておりました。ストリートブランドとしてカテゴライズされるサイズ感やターゲット層でありながらそういった社会問題を提起している、謂わば社会派ストリートブランドと言えますので、その辺がTシャツ以外のアイテムの作り込みや凝ったディテールと相まって大人なお客様の支持を得ているんでしょうね。





そしてこの季節、白ボディで爽やかさを演出しつつプリントネタはナチュラルというのは良い感じにマッチしており、しかもこの片方の袖にだけ木が連なっているというのもなかなかに個性的。しかもささやかではありますが明日納品される中の長袖Tシャツは値上がりして12,100円(税込)になってしまうのですが、こちらは値上がり前の9,900円(税込)。サイズはSとMの2サイズ展開です。





明日紹介の新ブランド名に変わったSCRTのTシャツの紹介、そちらもお楽しみに。





そして明日は台風から変わった熱帯低気圧の影響で日付が変わる頃から降り出して昼前から土砂降り予報になっております。まぁ雨だけですがそれでも交通機関が乱れる可能性がありますので皆様情報をチェックして立ち往生しない様お気をつけ下さいませ。ではまた明日。


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2024年09月25日

晩夏初秋の新作紹介 vol.21 NANGA×Flower MOUNTAINのYAMANO3 SP




ここ数日続いたこの涼しさも今日迄で明日からまた30℃前後の最高気温に戻ってしまうみたいですが。それでももう猛暑日は無い様です。真夏日に近い夏日であっても最低気温は20℃前後、もう朝晩は確実に羽織が欲しい気温です。今日は私も長袖Tシャツ1枚で過ごしておりました。この気温ですと半袖1枚で過ごすのは少々厳しいですし。漸く紹介した物も未紹介の物も含め秋らしいアイテムが動きそうな気温になって、若干ホッとはしておりますが、もし毎年こんな気温の推移なら9月の納品やアイテム構成を今年以上に考えなければなりません。





とはいえ。今月納品されたアイテムって吸汗速乾機能のあるnarifuriのマルチテックワッフルの長袖Tシャツと昨日紹介したスペシャルなトリコロール2柄と鉄板色×黒ボーダーの2柄のルミノアの長袖TシャツにKANELLの今シーズン限定色の長袖Tシャツ、タフダックのハイクオリティハイコスパなワークパンツ2型とロイヤルネイビーに別注したコーデュロイのSAS仕様のフィールドカーゴトラウザース、80年代デッドストックのゴールデンサイズな幻のコンコルドネームのMA-1、そしてもう再現不能になってしまったCANTON OVERALLSの最も凝ったジーンズとマニアックなカバーオール、あとは今日紹介するNANGA×Flower MOUNTAINのコラボスニーカーです。





気温が下がってこのぐらいになったらすぐに使える長袖Tシャツをメインにリーズナブルなパンツ、デッドストックや廃番になったスペシャルアイテム、そして別注やコラボといった限定アイテムで構成されていて、自分で書くのもなんですが、良いバランスで取ったと思うのです。ただその綿密な計算を上回る猛暑が続いてしまった、というだけの事ではあるのですが、それだけでかなり計画が狂ってしまうんですよねぇ。困ったもんです。なのでこれ以上となるともう既存のお客様に関係なく、血眼になって探している顧客様以外が沢山いるアイテムだけで1ヶ月を構成するみたいな事をやらないといけなくなってしまいますので、それはそれであまりに厳しいんじゃなかろうかと。だって今日紹介するこのスニーカー、発売開始4日でコラボした2ブランドの両方のオフィシャルサイトで完売しちゃってますので。


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アイテムについての説明はある程度新作告知でやってますので、被りそうなところは省くとして。フラワーマウンテン、かなりな人気になっている事が判る話なのですが、このコラボスニーカーは2色とも各ブランドのオフィシャルサイトで完売しています。ですがそれのみならず、フラワーマウンテンに関しては今シーズンNANGAともう1ブランド、バブアーとコラボしているんですけど、NANGAは1型2色だけですが、バブアーの方は3型10バリエーションも展開しているんです。ですがその中で早々に完売しているのは1型だけ。でもNANGAとBarbourどちらにおいても短期に完売してしまっている物には共通点があります。それはフラワーマウンテンが通常展開しているモデルと違う、コラボモデルのみの仕様の物である、という事。





このNANGAとのコラボモデル、YAMANO3というモデルをベースにしていながらデザイン的にも機能的にもかなり手が加えられております。バブアーの方で即完売になったのは今回のコラボに合わせて形ごと新作で他で展開のないモデル。やはり配色だけ変えるだけではなく、そこまでやらないとそこまでの瞬発力はないって事なんでしょう。


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このNANGAコラボモデル、YAMANO3をベースにしていながら、スニーカーのスペックではなくトレッキングシューズと同じソールの頑丈さと防水透湿機能を持たせております。その為にバックカントリーというトレッキングシューズに使用しているオリジナルのビブラムソールにソールを変更し、加えて米国コスモ社製防水透湿皮膜素材であるハイドロガードを使った防水ブーティをインナーに使う事でふうに機能を持たせております。通常のYAMANO3にはない機能性を持たせつつ、デザインにもオリジナリティを加えるべく、写真ですとパープルのスウェードになっている部分のデザインをNANGAのブランドネームの由来であるヒマラヤの世界9位の高峰であるナンガパルパットの稜線を模したラインに変更しております。なのでYAMANO3をベースにしていながらかなりカスタムされてデザイン的にも機能的にも差別化が図られたスペシャルなモデルになっております。





こりゃオフィシャルサイトではあっさり完売しちゃうのも判ります。そして今日ブログを書くにあたって一応チェックしてみましたが、取扱店のサイトでもメンズサイズを展開しているところはほぼパーフェクト完売しております。





にも関わらず。今日の時点で2色とも41・42・43の3サイズとも在庫があるんですねぇ、これが。しかしこのブログをアップした後、明日以降の動きは全く読めませんので、気になった方はお早めに。非常に良いと思います、デザイン的にも。価格は26,400円(税込)です。





さて明日は木曜日で展示会廻りはないのですが、やらなければならない事があり定休日は定休日とさせて頂きます。ただいつも通りで17時には店におりますので、お時間の合う方はお気軽にお立ち寄り下さいませ。そしてアイテム紹介ですが、明後日STAY CREATIVEの秋冬コレクションの半袖&長袖Tシャツの入荷が予定されており、入荷したら半袖Tシャツから紹介していく事になると思います。それもあって通年ですと秋分の日以降は秋の新作紹介に切り替えているのですが、今年はその半袖の紹介を終える迄は晩夏初秋の新作紹介のままにして、次の日曜日から秋の新作紹介に切り替えるべく引っ張っております。そこに繋げるのにはこれだな、という事で唯一残っているSTAY CRATIVEの長袖Tシャツを銘作紹介しておこうと思っております。お楽しみに。


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2024年09月24日

晩夏初秋の新作紹介 vol.20 Le minorのHeavy Weight Tricolor Border L/S Tee (Limited)




今日もやってしまいました、お客様が19時頃にいらしたのですが、聞いたら長崎から何故かこのタイミングで八王子の実家に戻ってきている大学生でわざわざいらして下さって“最近アメカジに興味が出てきたのだがその辺の事について聞きたいのとこれはというアイテムを紹介して欲しい”との事。なんかあれですかね、ついぞ訊かずじまいになってしまいましたがどこかで読んだりしたんでしょうかね、でなければどなたかからか聞いたとか。いずれにしろ折角いらして下さったんだし、ここに行けばガッツリ対応してくれると思ってご来店なんだし、という事であれこれとお話ししてあれも見せてこれも見せて、とやっていたらあっという間に22時半過ぎに。そこから写真撮って加工して書き始めたのは23時。という事で色々と書きたい所ですが、アイテム紹介に映らせて頂きます。





今日も日中は半袖Tシャツ1枚で良いけれど、朝晩通して1枚で過ごすなら長袖Tシャツだよな、という気温になってきたので、昨日予告した通りルミノアのもう出ないと言われていたスペシャルなヘヴィウェイトTシャツの紹介です。


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いやズルいですよねぇ、本国というのは。ホームタウンディシジョンというのはそりゃわが国でもあると思うのですが、それにしてももうルミノアはヘヴィウェイトの生地を廃番にすると言われてかなり経ちますが、定番色だけは日本のメンズの代理店が生地をストックして展開しております。それ以外の生地は残反も含め全て使い切って存在していないと言われていたんです。





ところがフランス本国のセレクトショップからやりたいというリクエストがあったそうで、それに対して日本に要求している程のミニマムを課さずに希望した配色の生地を作ってやったみたいなんですわ。そういうのは世界共通にしてくれよな、と思わずにはいられないのですが、厳然たる事実というか人間関係や利害関係でも本国の中というのは優先されるのは仕方がない事でもあり。で、それを何社かやっていたみたいで、その本国事情からそこそこなミニマムで別注を受けてしまった結果、残反が結構な量で発生していたらしく、それを恩着せがましく通常1色1サイズ50着なんてミニマムを課してきているのに、今回は1色1サイズ12着で作ってやるなんて言ってきよりまして。そうなるとこちらは若干釈然としないところがあってもこの残反を使い切ったらまた元通りのミニマムを言ってくるだろうな、と思えばこりゃやるしかないな、と。そんな訳でフランスのセレクトショップチェーン(複数店舗あるという意味です)2社がそれぞれ企画した柄をそれぞれ2色展開していたので計4バリエーション取る事にしました。





面白い事に、というかまぁ当たり前っちゃ当たり前なんですが、その2社全く違うコンセプトで作ってまして、こちらはここ20年以上ヘヴィウェイトでは出た事のない3色組のしかもトリコロールで作った如何にもフランスらしい柄の物です。


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しかもですね、基本はベースカラーに対してボーダーで入れているボーダーの太さは2色の物と同じなのですが、そのボーダー部分を2色に分けて2色の太さを足すと通常の1本分の幅になるという今までにない新機軸。ミニマムが非常に少なく2反で別注出来た20年以上前に様々な商社がルミノアを取り扱ってまして、その当時に3色使いを見た事があるのですが、それはボーダーの太さが変わらず、交互に違う色のボーダーが入っているボーダーでした。まぁそれはそれでネタバラシになっちゃいますけど今シーズンのカネルで提案してまして、当然取ってますが、こんな感じに細い2色のラインを重ねて通常のボーダーと同い太さにしている、というのは初めて見ました。





これトリコロールって言ってもねぇ、正統派そのものでマリン×ルージュ×エクリュの組み合わせで、ベースの色をマリンにしたものとエクリュにしたものの2種類なのですが、勿論これはフランスのセレクトショップが如何にもフランスなので今迄に無い物を求めて作った物です。物ではあるんですが、この3色ってフランスも英国も米国も同じ色の構成じゃないですか、国旗。ユニオンジャックも星条旗も構成している色は同じですから、これジーンズに合わせるとどの国の雰囲気にもなる、と言いますが、私の勝手なイメージではネイビーベースの物はどうにも英米調の印象で、エクリュベースの物は小粋なフレンチと言った印象を受けております。





どちらにしろこれ今迄にない上に、余程の大手がそのとんでもないミニマムを呑んで作るんじゃないと作れませんから現実的にはフランス国内で希望があって生地を編んでしまった場合を除き、これを逃すと手に入らない柄です。それでいてド定番色で構成されているというオーセンティックな配色でからこれは押さえておくべきだと思います。しかも今シーズンからルミノア全体の価格が上がって17,600円(税込)になっているのですが、長年取り組んできて在庫を沢山持っているB.A.Tですから、在庫の価格と平均して16,500円(税込)にしております。ささやかですけど新作でも価格が抑えられているというのは評価して頂きたいところです。サイズは3と4の2サイズ展開。今回ミニマムをB.A.Tともう1社でクリアしたので、全体の1/3程度(それ以外の発注はちょぼちょぼだったそうなので)をB.A.Tで押さえている事になっておりますが、これは減りが早そうですので、特にサイズ4が良い方は早めに押さえておく事をお勧めします。





という事で明日も今日と同じ程度の気温らしいので、長袖Tシャツ、ご検討頂ければと思います。そして明日ですが、明日はローンチしてから5日しか経っていないのにNANGAのオフィシャルサイトでもFlowerMOUNTAINのオフィシャルサイトでもすでに完売してしまっていたので、先日告知したNANGA×FlowerMOUNTAINのコラボスニーカーの紹介を予定しております、お楽しみに。


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2024年09月23日

晩夏初秋の新作紹介 vol.19 CANTONの1963XX Denim Late 1930's 5 Pocket Jeans “#1963-104” (後編)




連休最終日、とはいえこの連休は給料日近くで予算編成が厳しい連休でもあり。まぁその辺考慮してお取置きという選択肢を取るお客様もいらっしゃるのですが、昨日今日と使用目的がはっきりしているアイテムを見にいらっしゃるお客様がお越し下さいまして、具体的には身内の結婚式でのコーディネートの補完と、転職したらビジカジの社内規定がそれまでよりカッチリになってしまったので、その対応でジャケパンを、という方がそれぞれご来店下さったという。昨日いらした方の結婚式用に関しては靴・ベルト・ベスト・シャツといったところでしたが、今日お越しの方のご要望を聞いて最近のビジカジという定義の幅の広さを改めて認識させられました。





というのも最近ではビジカジと言いつつほぼ何でもありなカジュアルになっている会社の方が多く、いわゆるドレスカジュアルの範疇を指定しているところが減っていたからなんですが、ジーンズは駄目だけどそれ以外のパンツはOKで、後はあまりに仕事に対する姿勢を疑われないレベルなら良い、といったところが最近では多いんですね。でもクロージングテクニックを活かしたイタリアのクロージングを中心に取っているドレスカジュアルアイテムはもうちょっとアイテムとしては堅く、でもイタリアではパンツはジーンズでシャツにベストにジャケットで足元もカジュアルな革靴、という感じですし。しかも我が国の結構堅めのところでもあたりの出ていないデニム生地のスラックスはありでデニムの5ポケットでなければ良いといった感じなので、さてどうしてくれようか、となりますよね。まぁ今回は手堅くドレスチノにこの時期なので綿素材のジャケットとローファーという事になりましたが、靴も営業とか他社の方と会う仕事だと紐靴の方が良いでしょうし。これが良いのだ!と押し切ってしまうのは簡単ですけどその多様性に合わせた提案が出来てなんぼなところがあると思いますので、セレクトショップというのは。





と、前置きが長くなりましたが一昨日・昨日と2日間、キャントンの盛衰から見る日本デニム史にお付き合い下さってありがとうございました。お待たせしました、本日はそれを踏まえての今回取ったアイテムの紹介をさせて頂きます。


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1963XXデニムについては昨日説明しておりますので、そちらを読んで頂くとしてこのデニムでヴィンテージレプリカ的にリーバイス501をベースとしたバリエーションを作ろうとすると、尾錠の付いた1930年代のSXXモデルと大戦モデル、そして1950年前後のXXモデルに1960年代の66モデル辺りがディテールやシルエットの変遷を知っていると特徴的な変化のあったモデルと言えるでしょう。





ただこれ、SXXからXXにかけてのモデルはシルエットが全て太めのストレートって事になってしまいまして、それが好きな方には良いんですけどそうでない方には今一つ野暮ったく見えるのが否めません。CANTON OVERALLSの5ポケットのラインナップは3型で、1930年代後半のSXXモデルのディテールを踏襲したモデルと1940年代後半のXXモデルのディテールを踏襲したモデル、そして1960年代後半の66モデルの3型、それに加えてペインターパンツがラインナップされておりますが、どうせペインターパンツは太いんだし、という事でシルエットとしては5ポケットモデルはどちらも腰回りからお尻にかけてのシルエットは年代そのもののラインでありながら、腿から膝裏にかけての野暮ったさを生む余りの部分をバッサリとカットしてシャープなシルエットにしております。





そしてこの1963XXデニム、何と元々は12ozとデニムとしては軽量なんですが、いわゆる岡山での糊落としのワンウォッシュ(60℃台のお湯に10時間程浸けて天日乾燥)によって15%程生地が縮んで目が詰まり、結果的に洗い上がりでは13.75ozになっております。この13.75ozというのは元々のリーバイスの501XXに使われていたコーンミルズ社ホワイトオーク工場で作られたXXデニムと同じウェイトではあるのですが、昔から何故こんなに中途半端なウェイトなんだろうと疑問に思っていたんです。つまりこれ、未防縮の時代に縮んで13.75ozになっていたので、防縮かけて縮まなくなると12ozで作ったら12ozのままですから、それだと従来よりも軽くペラく思われてしまうので、防縮する様になって13.75ozで作った、という事なんでしょう。実際触ってみると斑糸とテンションゆるゆるで伸ばされていなかったのが目が詰まったのとでかなりな凹凸と粒状の隆起がランダムに現れるヘヴィオンス(触りとしては14oz以上です)のデニムになっております。この縮みが他のジーンズと一線を画すシルエットん完成に一役買っていて、元々のシルエットは余計な部分をシェイプしてあるとはいえそれなりな太さのストレートなのですが、縮んだ結果更にスッキリしたシルエットになってしまっていて、これだとヴィンテージディテールなのにシルエットはスッキリという私としては理想的なジーンズになっております。





この4型のパンツと4型のトップス(Early・2nd・3rd・Railroad Worker Coverall)にだけしかこのデニムは使われておらず、それ以外は防縮した生地が使われており、コラボモデルがいくつかありますがそちらにはこのデニムは使われておりません。





それではこのジーンズの作り込みを見ていきましょう。


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まずシンチバック、尾錠が付いております。これがあるとベルト無しでもこれで調節して履けます。この1963XXデニムはまさにその物ですが、5ポケット成立以前から未防縮のデニムは非常に縮むので、大きなサイズを買い縮み切った時に自分のサイズになる様に買うもので、それ迄はサスペンダーボタンで吊って履いているのが一般的でした。そうでなければこのシンチベルトで締めて履くかベルトを締めるかで、使う人が選べる様になっていたんですけど、リーバイス社ではサスペンダーボタンは1937年、シンチベルトは1942年に廃止されております。ちなみにベルトループが付いたのは1922年から。結果としてベルトに統一された、という事ではあるのですが、この尾錠が付いていてサスペンダーボタンがないというのは上記の通りで1937年以降1942年以前のディテール、という事になります。





そして股下リベット。未防縮のデニムを使っていた時代はファスナーにすると波打ってしまうのでボタンフライにしていたんですが、それが残ってボタンフライのフロント=ヴィンテージディテールといった感じに。でも8割以上防縮かけたデニムのジーンズはファスナーでも問題ありませんので、楽チンという点においてはジップフロントにした方が良い、という事に。そしてボタンフライの場合上から左右に力を入れ気味に前後に引くとフロントボタンが一気に外れるので、そういう風に外す人が多いのですが、その際に股が裂けてしまわない様、そしてリベットで補強したデニムパンツ=ジーンズという特許を持つリーバイスとしてはその謳い文句の主張として裂け易いとされる場所にはリベットを打っております。でも実際には余程の事がなければ裂ける事なんてないので、あくまでリベット補強パンツのアピールだった、というのが本当の様です。このディテールはジーンズ初期から1942年に廃止になる迄リーバイスの頑丈さの象徴的に使われてきましたので、その廃止については色々実しやかな風説があり、焚き火で熱くなった股リベで大事な所を火傷したというクレームがあったからだとか言われてますが、シンチバックと同じ1942年に米国で第二次世界大戦の物資統制が実施され、リーバイスも大戦モデル仕様に切り替えを余儀なくされた事で廃止された、というのが真実です。


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そしてヴィンテージレプリカブランドの作るジーンズで1960年代以前のリーバイスのディテールを云々謳っておいてこれが無いのは許せないと個人的に思うのが隠しリベットです。この隠しリベットが採用されたのが1937年で、それ迄はお尻のポケットの角には表からリベットが打たれておりました。しかしその結果馬の鞍を傷つけるとか裸馬だと馬の背を傷つけるといった問題が報告されており、1935年には米国の自動車普及率が55%となった事で高価な耐久消費財であった車のシートを傷つけるのを防ぐ為にこの年から隠しリベット仕様になりました。リベットを廃止せず隠しリベットにする事でリベット+デニム=ジーンズという彼らの矜持を保ち続けました。1967年に廃止される迄リーバイスのデフォルトディテールでしたから、これ無しで作るなんて考えられません。当然これでこそ細部のディテールに神宿るというヤツですが、そんなディテールは当然ですけどしっかりと押さえております。そしてフロントボタンはオリジナルの鉄製ブラックボタンを使用し、裏リベットは全て銅製で表の皿は黒くメッキした打ち抜き仕様にして往年のディテールを忠実に再現しております。この黒メッキというのをやっているところはとても少なく、なかなか見ないディテールですが、これによって赤銅色が表に出ずとても大人びた付属使いと言えるでしょう。これはこの1930年代後半モデルのみのリベットとボタンの仕様で、これ以降のモデルである2型のジーンズのリベットはノーマルの銅リベットです。





加えて今回のこのモデルに対して私が好感を持っている仕様、革パッチに無駄に凝っておらず、、リベットの皿を全て黒メッキしてギラツキを無くしたのに合わせ、ヒップポケットに付けたタブと、革パッチが付いていた場所のマーベルトとヨークの間に付けた落ち着いた黒いタブ、これでこのシリーズのブランドイメージを作り上げております。元々のCANTONの革パッチの資料は沢山ありますが、このシリーズに関してはヴィンテージディテールを踏襲しているとはいえベタベタなヴィンテージリーバイスのレプリカではなく、日本最初の国産ジーンズ作成時にリーバイスと同じコーンミルズデニムではなくキャントンデニムを使った日本のジーンズを志した事から、リーバイスの特許たる赤タブを使用せず日本製である事を主張する大人なタブを使用し、加えて革パッチのあるべき位置をステッチで示すのみ、としております。あくまで実用ではないアピール用のタブやパッチはこの前社から開発に10年かけて辿り着いたデニムを活かす為の付属である、という事です。





という事で3日かけて説明をしてきましたが、如何でしょうか。ここまでこのジーンズについて丁寧に説明をしたところはありませんし、日本のジーンズ史について語るところはあってもアプローチの仕方がキャントンメインではないでしょうし、米国のキャントンミルズの興廃やヴィンテージレプリカブームについてまで語るところもないので、それなりにトリビア満載で楽しんで頂けたかと思います。今回サイズは28・30・32・34・36インチの5サイズ展開で、この表記は洗い上がりで大きく縮んだ後の表記です。ここから1.5cm程度縮む可能性はありますが、ある程度縮みは確定しております。ただ捻れてはいきます。価格は36,300円(税込)です。特に28・30・32に関してはB.A.Tにある分が全てになりますので、気になった方はお早めに。





再現性のない、発表当時は色々と露出していたものの、二度と作られない価値あるデニム生地です、是非チェックしてみて下さいませ。





明日は今日随分と涼しくなった事もあって同じぐらいの気温の様ですが、またすぐ30℃になってしまうみたいですけど、最低気温は20℃前後になるみたいですし、ここは本国の定番ラインナップには存在しないヘヴィウェイト生地のルミノアの長袖Tシャツのスペシャルカラーを紹介しておこうと思います、お楽しみに。


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2024年09月22日

晩夏初秋の新作紹介 vol.18 CANTONの1963XX Denim Late 1930's 5 Pocket Jeans “#1963-104” (中編)




今日は朝から結構な雨。とはいえ昼頃には上がる、という予報だったのでまぁ良いや、と思っていたんですが、実際蓋開けてみたら夕方にも少し降る時間帯があるという予報に変わり。なんだよこれ、危ねぇなぁ、と嫌な予感がしているのと、昨日時間切れで取り敢えず無理矢理キャントンの隆盛から見る日本ジーンズ発展史を、ジーンズの聖地児島誕生のところまで書いて終わってしまったので、気持ちが悪くて取り敢えずアイテム紹介にたどり着く前迄は出勤してきて昨日動いたアイテムの補充なんかをしたらすぐに書いてしまおう、という事でブログに取り掛かっております。結論から書きますが、キャントンの栄枯盛衰について書く中編と、今回のアイテム紹介そのものとなる後編の2回分に分けて、計3回の前編・中編・後編に分けさせて頂く事にしました。後編だけにするととても長くなりそうなので。おいおい、随分とジーンズ1本紹介するのにかけるじゃないかよ、と思われる方いるかもしれませんが、この説明がないと何故に今回このジーンズを取るに至ったのかが伝わらないので、申し訳ありませんがお付き合い下さい。





さて、戦後から1980年代にかけてのジーンズをめぐる我が国での趨勢なのですが、昨日書いたのは1965年頃までの話。そんな作っても作っても物が売れるなんてなんて良い時代だったんだろう、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、世の中そうは問屋が卸さないんですねぇ。まだジーンズ戦国時代的に今では知る人もいないファクトリーブランドが乱立した児島ですが、未だEDWINも誕生していなければ、クラボウもカイハラもクロキもいない、つまりまだ国産デニムは織られていないんです。しかし色々と問題が発生してきます。





児島以前から元々群馬の渡邉縫製で作ったのが国産ジーンズ第1号だというのは書きましたが、そもそも縫製業というのは設備投資が必要な上安価な製品が多くを占めるので工賃が安く当然人件費も安いんです。それ故に地方都市や交通の弁の悪いが故に人件費の安い地域なんかで発展し、ある程度街が発展すると他の産業に人が流れて人件費の安い縫製業からは人が離れてしまいます。しかもある程度以上の技術が必要という困った仕事なのです。だから先進国でも貧しい地域へ、次に先進国から発展途上国にアウトソーシングされ、それがどんどん変遷していく。米国から日本、日本から韓国、韓国から中国、そして中国からベトナムやインドネシアやバングラディシュ等さらに人件費の安い所に仕事が流れていくのです。それは経済成長めざましいこの時期の日本でも同じ事で、関東でキャントンの生産委託をされていた埼玉の縫製工場や群馬の渡邉縫製等では今も日本の主力産業である自動車や電化製品の工場が進出してきて人材確保が難しくなり縫製工場の経営が今の人手不足倒産と同じ構造で厳しくなってきます。そして児島でもファクトリーブランドの生産が主流になり、キャントンの業務委託枠がどんどん縮小されてしまい、需要に対して供給が大きく少ない状況になります。





それでもブランドスタート3年後の1966年の段階でキャントンの生産数は年間10万本以上の規模になっていて、今では想像も出来ない恐ろしい売れ方になってました。しかしそうなるとその生地を供給している米国CANTON社からしても日本市場は一大マーケットであり、大石貿易のジーンズブランドCANTON、商標権を取らずに無断使用していた、発展途上国あるあるに当時の日本企業も陥っていたみたいでして、1968年に米国CANTON COTTON MILLS社から社名を使用するライセンス料を払えという訴訟を起こされます。まぁ当然ちゃ当然な事ですし、もし米国CANTON COTTON MILLS社が日本法人を作ったり他の商社を通じて生地を流通させたりするとCANTONネームのジーンズとCANTON生地使用を謳う他のジーンズブランドが混在してカオスな状況になりかねません。ここで日本で最初に作られたジーンズ初代CANTONのネームは途絶え、大石貿易のジーンズブランドはCANTONからBIG STONE(今見ると笑えます、大石ですからw)に改名します。とはいえ、これ調べてみると米国CANTON社は第二次大戦で荒廃して生産能力を失っていた欧州への繊維輸出で大儲けしていたのですが、欧州の復興が進んだ1950年代後半から輸出量は減り米国繊維産業は不況に陥り、1958年には所謂レイオフで週4日の生産にするレベルになっていました。1961年には近隣のエトワ川が氾濫して全ての工場が浸水して長期的な工場閉鎖を余儀無くされ、大石貿易がデニムを買い付けた1963年頃には経営不振に陥っており、しかもこの年労働組合が結成されてストが3ヶ月も続き翌1964年1月まで生産量が激減するという状況でした。それ故にCONE MILLS社がけんもほろろに商談に応じなかったのに対し、少しでも売り上げを上げるべく大石貿易の話に乗った訳でして、そんなCANTON COTTON MILLS社にしてみたらそれなりな商売になったんだからライセンス料も寄越せ、と言ってくるのも当然。そしてCANTONネーム問題がライセンス料の支払いではなく改名で終わってもデニムの卸売を止めなかったのも大人の事情として順当でした。





ただこの時点で実はとんでもない大問題が発生しております。しかしそれに当時の日本では気づいておりません。現代のデニムに対する見識がジャパンジーンズ黎明期にはなかったのでしょう。こう書いている私もそれを1980年代の中学生時代に把握していたかというとそんな事はなく、色気付いてファッションに興味を持った高校生以降でしたから、気づいちゃったのって。何が起こっていたのかというと、1961年のエトナ川の氾濫による浸水以降経営状況が悪化したことにより、CANTON COTTON MILLS社の経営陣は必死に生産効率を高めようとした結果、1963年に当時既に時代遅れになっていた旧型織機で構成された第1工場を閉鎖し、革新織機で構成される近代的な第2工場を昼夜交代制で24時間稼働させる事にしたんです。この切り替えで工場の従業員が不安に陥って労働組合が結成される事になったのですが、そう、1963年の10月以降CANTON COTTON MILLS社のそれまで作っていた旧型力織機による味のあるデニムは失われてしまいました。つまり、日本のCANTONのデニムは最初の年だけコーンミルズ社のXXデニムとまた違った味の耳付きのデニムであって、それ以降は革新織機による広幅のデニムで作られた物であり、後に日本のデニムのクオリティを世界的に知らしめるカスタムした旧型力織機による極端な斑糸によるディフォルメされた味のあるデニムの元となった、古き良きアメリカンヴィンテージデニムと同等のレシピによる生地はこの時点で失われてしまったのです。





実際にこの旧型力織機によるデニムこそが古き良きヴィンテージデニムジーンズの魅力だったという事に日本人が気付くのは1975年に発行された“Made in USA catalog”によってTVドラマや映画からしか米国のファッション情報が得られなかった時代に米国製アイテムの魅力を圧倒的な情報量で紹介されてからです。因みにこの雑誌の編集メンバーが中心となり今も健在なファッション雑誌“POPEYE”が創刊されるのですが、そこで初めて米国でも珍重されるヴィンテージジーンズというものを認識するに至る訳です。





ちょいと話が先に進みすぎたので日本の歴史に話を戻して、1968年の改名以降も売り上げを伸ばし続けたBIG STONEですが、生産を安定させる為に縫製業は人件費の安い地域に変遷する法則に則って宮城の河南町(現石巻市)に念願の自社工場である東北ビッグストンを設立し、250名が働く大工場に発展させ、秋田に第二工場を持つまでになり、年間150万本を生産する様になります。今じゃ考えられない売れ方ですよね、これ。しかしここで世界的な経済ショックが発生。そう、オイルショックです。イスラエルと中東諸国の第4次中東戦争で中東諸国で構成されるOAPEC(石油輸出国機構)がイスラエルを支持する国に対して経済制裁として石油の輸出価格を4倍にした事による経済ショックですが、エネルギーを輸入に頼る我が国は今も変わらず同じ問題を抱えているので理解出来るでしょうけど、まぁ最悪ですわな、これ。原発反対という政治家はこの問題をどう説明してくれんだか、原発開発が進んだのもこのオイルショックで火力発電所を動かす重油が高くなっても安定して電力供給が出来る体制を作る必要があったからであって、現在の様に発展途上国の二酸化炭素排出枠を買って火力発電でガンガン二酸化炭素排出しまくっているのに目標達成は微妙とか言っている恥知らずな環境保護への取り組みよりかは安全性の向上に取り組み続ければ原発のほうが随分とマシな気がしますけどね。再生可能エネルギーへの変換も結構ですが、だったらその設備投資分電気代が上がるのもやむなしという事になりますが、値上げには何がなんでも反対という人の方が多いでしょうから。





また話が脱線しそうなので元に戻しますが、これによる不況で日本中に溢れかえっていたジーンズショップは凄まじい勢いで倒産し、売掛金の回収が急速に悪化する中で日々5000本のジーンズが生産されるんですからそりゃBIG STONEの経営は更なるスピードで悪化します。その対策として工場の操業を停止して膨大な在庫をダンピングも良いところの投げ売りをして在庫を現金化する事で一時的に対処はしましたが、結果として消費者からのイメージが地に落ちてしまい、それまでの勢いがブーメランで逆風となりヴィンテージデニムの再評価によるヴィンテージレプリカブームに繋がる80年代を待たずして倒産してしまいました。





そんな中でも地元密着でジーンズの生産拠点として進化し続ける児島では1973年にクラボウがそれまで輸入に頼ってきたデニムを紡績・染色・織布までの全工程を行う初の国産デニムKD-8を開発する事に成功。その生地を使って翌年1974年にBIG JOHNが発表したのが、生地から縫製まで全てを国産化した純国産ジーンズ第1号となります。そしてそれにカイハラやクロキが続き、紡績から製品まで一貫して製造可能なデニム製品の世界最大拠点ともいうべき児島の街が成立します。全てが同じ地区にあるというのは最大の発展要因でしょう。





と、CANTONは1968年に消えてしまい、後継ブランドBIG STONEは倒産してしまいましたが、ジーンズ自体はベトナム戦争反対のフラワームーブメントの米国で生み出されたベルボトムやブーツカット、そしてそれを見てファッションを組み上げた全共闘・フォークゲリラ世代の若者はジーンズをデフォルトにしたので、人気はより高まり、大石貿易とBIG STONEは系列企業ですが経営は別という事で大石貿易は存続しており、BIG STONEの各工場はそれぞれ再建されて石巻の東北ビッグストンはラングラーの工場になり、秋田ビッグストンは別会社に買収されてエドウィンの協力工場になっていきました。





そして80年代に入り、米国では1981年に旧型力織機によるセルヴィッジデニムを使ったジーンズが消滅したのに対し、日本では大量生産の中で失われてしまったジーンズの魅力を再発見するべく、かつて1963年に大石貿易がやったのと同じ様に米国のジーンズを解体してパターンを起こして自ら生産を可能にする作業ではあるのですが、40年代50年代のヴィンテージジーンズを解体してディテールを研究し、生地を分析して何がその魅力を生み出しているのかを検証する作業を考古学的なアプローチで行うという、世界のファッションの流れとは真逆の作業を行い、温故知新というべき動きが発生します。80年にビッグジョンがセルヴィッジジーンズを発表して大手メーカーもその動きを見せましたが、より先鋭的にヴィンテージデニムの良さを追求してストゥディオ・ダ・ルチザンやシュガー・ケーン、ロデオアンクルにドゥニームといった作り手のデニムへのアプローチは違えども日産5000本では出来ない作り込みをした2万前後のジーンズを提案し始め、結果それが1990年代のヴィンテージレプリカブームを産むに至ります。そしてそんな中1984年に大石貿易がCANTONブランドを復活させます。それはオイルショックの影響を受けて1981年に米国CANTON COTTON MILLSからCANTON TEXTILE MILLSに改名していた会社が倒産した事で商標問題が解決したからでもありますが、ヴィンテージデニムに対する評価の高まりの中、リーバイス日本史社一期生だった大石正夫氏(創業社長と同性だが無関係w)が大石貿易の社長に就任し、日本初の国産ジーンズの名を冠するブランドを復活させるのに革新織機で織られた紙っぺらのようなデニムにはない味を吹き込むのが当然とクラボウに依頼して織ったオリジナルのセルヴィッジデニムを使って3種+阿波正藍綛染の4種類をラインナップして本気のストイックな岡山製ジーンズメーカーとしてスタートし、1990年代のヴィンテージレプリカブームではその血統の正統性と哲学的に高く評価されてはいましたが、如何せんバリエーションが少なく。結果的にこの復活は長くは続かず、バブル崩壊後の第1次ヴィンテージレプリカブームの終焉と共に2003年に大石貿易の倒産という形で終焉を迎えます。





ですが倒産前の1998年から大石貿易のCANTONは原点に立ち返ろうと1963年に最初に輸入された旧型力織機で織られた未防縮デニムの表情を再現しようという構想があり、研究を進めてはいたのですが実用化を待たずに倒産していました。それを大石貿易倒産時に負債を負っていた繊維商社の豊島がCANTONの商標権と共に2003年に継承。そこから創業当初に使われていた生地をよりバージョンアップしたクオリティで復活させるプロジェクトを更に5年をかけて2008年、CANTON OVERALLSとブランド名を変え、CANTON 1963XXデニムとしてして復活させました。





漸くあとちょっとで今回の新作紹介に移れるのですが、2008年からもう16年経ってんじゃん、今更なんでやろうってのさ、という疑問もあると思いますし、もうちょっとだけお付き合い下さい。





未防縮のデニムというのを謳っているメーカー、幾つかあるのですがこれ単に未防縮では意味がないのです。元々旧型力織機で織られた生地が良いとされるのは縦糸のテンションを緩くすると凹凸が出るからなのですが、未防縮の糸というのは縮むだけじゃなく伸びもするのです。天然素材である綿を紡績する紡績技術の問題でして、現代では毛羽のない均一で斑のない糸を作る事が可能ですし、先に蒸気に当てて防縮する事も可能です。それに対してかつてのガラ棒の紡績機程ではないにしろ、旧型の紡績機で紡績した糸は不均一で斑がありました。それが良い味というか糸自体が凸凹していたんですけど、それを力織機で織る事で相乗効果を生み出していた訳です。ですが防縮していない糸の味を活かすのであればテンション緩めとかいうレベルではなく、伸びないギリギリのテンションでゆっくり織るしかないのです。ですがそうすると非常に生産効率が悪く、このCANTON 1963XXは何と1台の織機で1日に30m弱しか織れず、つまりこれ1日に1反織れないという事に。通常の旧式力織機である程度テンション緩めたといっても1日に10倍程度は織れます。なので単純な1台の生産量で割ると10倍の価格になってしまうのですが、それはあまりに無理があるので、通常はこの1日30m弱なんてのは受けてもらえません。なので一般的に未防縮を謳うデニムは速さは通常のまま糸を未防縮にしているので、伸びた状態で織られており、その違いは明確に価格に反映されてしまいます。





今の場所に移転する以前、店舗での営業を開始した1998年からEVISUジーンズを取り扱ってきましたが、当時のEVISUで8割防縮したNo.2デニムのジーンズで17,800円だったのに対し、同じレベルで生産効率が悪い未防縮のNo.1デニムのジーンズで27,800円。その後値上がりして2010年頃にはそれぞれ2万円台前半と3万円台前半に値上がりして以来そのままの価格で販売しておりましたので、お買い上げ頂いた未防縮のNo.1を毎回洗いに行って裾上げ出来る状態にするのを請け負っていた私としては、3バリエーションしかないCANTONを今あえてやらなくても良いよな、と思って取り扱いをしてきませんでした。EVISUの栄枯盛衰についてはまぁこの際置いといて、そのEVISUでも今はNo.1デニムをほぼ生産しておらず、物価高が進む中ジーンズの価格は据え置きだよなぁ、と思っていたら、生産効率の悪さにもうこれ以上は無理、という事でクラボウが今までの価格で1963XXの生産を請け負うのは終了という事になったそうで。そう、つまり本当に未防縮の糸を使って最低のスピードとテンションで旧型力織機で織ったデニムは少なくともクラボウ(EVISUもクラボウのデニムでした)はもう織らないという事なんでしょう。





そう、この1963XXデニムは生産を終了してしまい、このデニムを使って作られるアイテムは現在生産された分のみ、となってしまいました。こうなってくると話はまた別じゃないですか。気が付いたらもうディフォルメされた安定のクオリティのセルヴィッジジャパンデニムは豊富にあるにしても、このクオリティはもう手に入らない、という事になりますから。これはやっておかないとあかんでしょ、という事で今回特に28・30・32インチに関しては取ったモデルの在庫の全てを総浚いして取る事になりました。





とまぁこれで日本ジーンズ史における第1号国産ジーンズメーカーを継承し、米国でも倒産して現存しないけど一時世界第3位のデニムメーカーであったキャントンミルズの傑作デニムを復活させるプロジェクトにより生み出されたけれど今また失われてしまったデニムを使い、ヴィンテージディテールを散りばめつつ現代的なシルエットで作られたアイテムを今期取るに至った経緯のお話はおしまいです。





長らくお付き合いくださった皆様、てかオメェが長々書くから付き合わざるを得なかったんじゃないかよ、という方も含め、お付き合いありがとうございました。明日は満を持してこのデニムを使い1930年台後半のディテールを散りばめたジーンズの紹介とさせて頂きますので、お楽しみに。


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2024年09月21日

晩夏初秋の新作紹介 vol.17 CANTONの1963XX Denim Late 1930's 5 Pocket Jeans “#1963-104” (前編)




連休初日。まぁ前回と同じでお出かけしている方も多く、夕方までお客様がいらっしゃらなかったのですが、昨日書いた様に昨日予定していた納品が今日にズレ込んだ事もあって、品受けと検品と品出しで忙しくしておりました。その後夕方からお客様がポツポツといらして下さり、最後のお客様が22時半過ぎまでいらしたので、お帰りになってから慌ててブログを書いております。それもあって今日は前置き少なめで本題に入ろうと思うのですが、本日入荷した中から予告していた通りジーンズの紹介をさせて頂く事に。





で、夕方前から画像の修正やなんかはやっていたんですが、あまりに語る事が多いのと今日のこの時間になっている事もあり、今回は前後編に分けて2回に渡って紹介させて頂く事にします。





そして、このブランドが何たるかを書こうとするととても長くなってしまうのと、資料を集めていなかったので、今日は写真無しの字面で私の日本ジーンズ史の知識を基に描かせて頂く事にします。後から資料写真をつけるかもしれませんが。





日本人で最初にジーンズを履いたのは白洲次郎氏だと言われておりますが、こちらも諸説あるんですけど日本人がジーンズという物を知らしめて広まったのは戦後闇市だったと言われております。何しろ我が国は物資不足な上生産機能も失われておりましたので、闇市には米軍の放出品や彼等が使い古した古着なんかが出回っておりました。その古着の中に着古して色が抜けたジーンズがあり、それはわが国のもんぺ等に比べたら古着なのに丈夫でしたし、戦後復興の作業に使う作業着として人気商品となったそうな。





闇市にそれらの品を供給する、米軍関係者と取引出来るコネクションを持った仲買商社が幾つかあり、それらが我が国のジーンズ史に深く関わってきます。その中の一つが大石貿易でありその社長が後にキャントンを立ち上げる大石哲夫氏でした。因みに大石貿易は都内最大の闇市のある上野の南側、秋葉原に、後にEDWINとなる前身の常見米八商店は北側の日暮里に本社を構えておりました。日暮里の繊維問屋街の入り口、日暮里駅側に未だエドウィンの残反を売っている店があります。





さて、その大石貿易の大石哲夫氏、古着のジーンズが日本で人気なのを認識していたのですが当時の日本にはデニムを作れる生地メーカーがなく、1963年に繊維輸入自由化された事から米国からデニムを輸入して日本で縫製する、半国産ジーンズを作ろうと考えます。1960年頃には大石貿易は米国からリーバイスの新品や中古のジーンズを輸入して全国に卸す販売網を確立し、リーバイスジャパン社のない頃なので、日本有数のジーンズの輸入貿易商社に発展しております。戦後闇市で身を起こした仲買人から考えたら大発展ですが、だったら国産で低コストのジーンズを作って更に儲けよう、となったんですね。





そして米国に生地とミシンの買い付けに行くのですが、業界最大手のコーンミルズ社はまぁ言うなればジャップになんぞ売ってやるもんか!という感じで門前払いをくらい、業界2位のキャントン社と契約してデニムの買い付けには成功。そしてそれに続いてジーンズを縫製するのに必要とされる特殊ミシン一式も買い付けます。そして群馬の渡邉縫製で作られたジーンズが国産第1号ジーンズ、つまりこれが日本初のジーンズという事になります。





そして1963年、生地メーカーの名を冠したCANTONの名前で日本初の国産ジーンズを発売するのですが、築いた販売網を使ってこのジーンズを売るも全く売れず。そう、日本人は糊付きの生のジーンズを見た事がなく、縮みも考慮せず最初から柔らかなユーズドのジーンズしか知らなかったんです。その為売上不振な上クレームの嵐。縮んで履けないとか色落ちして下着が青くなったとか今ではあり得ないクレームが殺到したみたいです。そこでかつて中古のジーンズを洗っていた洗濯機で新品のジーンズを洗ってワンウォッシュにして売ったら飛ぶ様に売れてCANTONはジーンズとして日本を席巻する事に。





作っても作っても追いつかないぐらいに売れまくったキャントン、群馬埼玉の縫製工場を多数使いましたがそれでも追いつかず、学生服の産地である岡山の児島なら厚いデニムも縫えるだろう、というので尾崎三兄弟の長男、尾崎小太郎が経営するマルオ被服に生産委託をします。ここで初めて児島でジーンズ!というのが誕生するのですね。そしてマルオ被服がフル稼働するのを見て次男三男が経営している山尾被服もキャントンの生産委託を請け負う様になり、洗い加工を請け負う工場なども近隣に出来てジーンズの街児島は発展し始めた、という訳です。





そしてノウハウを身につけた2社はキャントンの生産を請け負う傍ら自社でマルオ被服はBIG JOHNを、山尾被服はBOBSONを自社ブランドとして立ち上げて大成功します。それを目の当たりにした児島の学生服工場はどこもかしこもファクトリーブランドを立ち上げて、これが当時は作れば作る程売れた事から空前のジーンズバブルが児島を席巻。これにより児島は今に続く国産ジーンズの聖地となったのです。





さて、ここまで書いて日付が変わりそうなので、残りは明日。キャントンが日本のデニム第1号だった事はお判りになったと思いますので、それが何故今回取ったジーンズに繋がるのか、書かせて頂きます、お楽しみに。


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posted by mercier at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | Main | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする