先月末が土曜日だった事もあって週明け月曜は月末の支払いやら師走の月初でやらないといけない事が色々あって、バタバタしている内に時間が経ってしまった1日でした。とはいえ、ここからの入荷が結構予定されているんですよねぇ、今年は。9ヶ月以上前、物によっては10ヶ月以上前に気候や経済状況をイメージして展示会発注する、というのではこの温暖化なのか異常気象なのかには対応しきれない、というのが思うところでして、それに対応するべく展示会ベースではなく動ける欧州の専業ファクトリーのファクトリーブランドや独自のペースで妥協のないアイテムを作り続ける基本自社展開のブランドを直接取るというのに取り組んだ今シーズン、それだけに本当に寒くなるのが判ってからぶつけようと引っ張っていたら今月以降に持ち越しになってしまった物が複数あります。
でもまぁ、それはそれでありなんじゃないかと思わなくもなく。というのもその展示会ベースで動きつつユーザーからの信頼を失わない様に採算度外視で古き良き物作りを続けていたら、まさかブランドが無くなってしまうなんていう事態に直面する事になってしまったので。今日紹介するアイテムは新作紹介ですが再現性のない失われた名ブランドの一品です。
シュナイダーは1890年にゴム製品を扱うメーカーとしてウィーンで創業し、戦後1950年代に自社工場でコートを中心としたアウターを生産するメーカーに転身します。以降オーストリア伝統のローデンクロスを使用したコートは“ローデンコートといえばシュナイダー”として貴族階級から人気を博し、欧州を代表するアウターブランドとなります。ローデンクロスが高級コート生地として公式な場や社交界のパーティに出向く際のコートとして認知されたことからシュナイダーは“コートの王”と称される様になりました。しかしこの会社の創業者一族は、その名声に甘んじる事なく、伝統的な物作りを頑なに守りながら革新的な素材使いにも取り組み、ウール100%のローデンクロスがエアコンの効いた中で過ごす事が多い現代のライフスタイルにはヘヴィになってくるとアルパカやカシミアを混紡してローデンクロスの生地感はそのままに、軽くストレスのないよりラグジュアリーなコートを提案したり、ローデンコートが元々は貴族の狩猟着として考案された事から、ダウンやオリジナルの中綿素材を使い防水透湿性能を持たせたこちらもオリジナルの表地を組み合わせた、シュナイダーの格はそのままに実際フィールドで使用しても遜色のない機能性に富んだコートを提案してきました。
ただこのメーカー、妥協のない素材を使って本国オーストリアの自社工場での優れた技術を持つ縫製職人による生産にこだわってきた結果、当然価格もそれなりです。基本的に10万以下の販売価格のコートはほぼ存在しません。それでいて価格上昇の要因が多々あっても出来る限り価格を抑える事に尽力し、そしてコロナ禍中で発注が激減しても発注が付いたアイテムは生地が無いとか外的要因以外は損益分岐点以下の発注数でも生産して量産価格で納品します。それでいて各国の代理店にも圧倒的な資本力を持つ大手商社ではなく、ブランドイメージを毀損する様な然もそれ着ていればセレブに見えるみたいな下品な宣伝や情報操作をしないところを指定しています。この価格帯のインターナショナルメゾンや世に広く知られたラグジュアリーブランドの様なイメージ戦略を取らない製品は欧州でも極一部の層にしか手が出せませんし、名声に商業規模が比例しません。
にも関わらずエンドユーザーからの信頼重視で採算度外視でコロナ禍中も生産し続けた結果、昨年まさかの倒産という事になってしまいました。今回のこのコートは、昨年秋冬分として発注していたけれどその倒産の影響で出荷が止まってしまった分で既に生産されていた物が、紆余曲折を経て破産管財人から債権回収の一環として今年になってから叩き売ってしまうよりは若干のディスカウントで引き取らないかという打診の後奇跡的に送られてきた物です。それだけに崇高な経営哲学と心中した戦後ヨーロッパを代表する銘ブランドの最後の遺産みたいな物です。
まず生地は一見ヘリンボーンのウール生地に見えますが、これシュナイダーオリジナルの2レイヤー生地で、表地のポリエステルに上質なウールのヘリンボーン生地の表情をスキャナーで読み込んでプリントした物です。その表面を微起毛させる事で防水透湿性能とウールの様な表面質感と表情を併せ持ち、しかもメンテナンスが楽という他での取り組みのない独自の方向性で新たな試みをしております。といってもこれと同じ表地の物を5年前に取った事があったので、認識していてこの生地のモデルをセレクトしたのですが。
そして中綿もオリジナルで開発した汗をかいても保温性能が落ちないポリエステル成分の中綿を使用し、実用性と機能性を兼ね備えております。結果表地と中綿の組み合わせで雨風雪とアルプス至近で過酷な冬が来るオーストリアの気候下での快適なアウターになっております。
そしてギミックも非常に凝っていて、フードはフロント内側、ファスナーでフード一体の前立て部分が本体と接続されていて、まるでフード付きのベストを重ね着している様に見える、フェイクレイヤード仕様になっております。このフード部分自体がフードの縁に本体と同じ生地を使って親和性を持たせたりと非常に凝っておりますが、フロント部分で中綿が重なるので真冬の防寒性もバッチリ。ビジネスやクロージングコーデで使う際にはこのフェイクレイヤード部分を外してしまうと、その高機能を表に見せない、上質なウールのロングダウンにしか見えないシンプル且つラグジュアリーなコートになります。本体だけでもフロントはファスナーとドットボタンの2重仕様ですので十分に暖かいです。
現在シュナイダーの職人の一部を雇用してシュナイダーのラインナップを継承しようというオーストリアブランドがあり、そこのサンプルを見たのですが、それがまぁローデンクロスの再現が出来ないのか採算重視なのかウールオンリーのローデンクロスで作ったローデンコートで24万とかでしたから、シュナイダーの企業姿勢やクオリティを見てきた人には敬遠されてしまうでしょう。そしてこのコート、2着だけしか納品されませんで、50と52の各1着のみです。ほぼサンプルですね、これ。そして価格は2019年に取った同じ生地の別モデルが128,000円(税別)だったのですが、今回ギミックが加えられているにも関わらず、5年前と同じ140,800円(税込)で提供出来まして。店頭に残っているカシミア20%のローデンクロスのチェスターコートやロロピアーナのストームシステムを使ったこの上なくゴージャスなダウンジャケットと並んで長く使って頂きたい本物の中の本物です。実際今作ったら上記の通りで倍近い価格になると思われるお値打ちなアイテムですので、気になった方は早めに押さえる事をお勧めします。サイズですが、かなり細身でして、50で日本のM程度です。今シーズンのキモなアウターの一角です。
さて明日ですが、明日は12月ですし巻物の紹介でもしておこうと思っております、お楽しみに。

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